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応援は勝敗に直結しない。だからこそ、格好いい。東京六大学応援団連盟委員長が語る、応援の価値

応援は勝敗に直結しない。だからこそ、格好いい。東京六大学応援団連盟委員長が語る、応援の価値

毎年、大きな盛り上がりを見せる東京六大学野球。この大会に選手と同じく熱く向き合っているのが、会場全体を巻き込み、盛り上げる応援団です。今年度、六大学の応援団を束ねる「東京六大学応援団連盟」の委員長を務めるのは、明治大学4年の小林大河さん。小林さんが応援団に所属したきっかけや、活動を通して見つけた応援のあるべき姿、応援が生み出す価値について伺いました。

  • 小林 大河

    2024年度東京六大学応援団連盟委員長。智辯学園和歌山高等学校時代から応援団に所属し、野球や陸上などさまざまなスポーツの応援に励んできた。明治大学応援団では、渉内、ステージ企画、記録の3役を兼任する。

    2024年度東京六大学応援団連盟委員長。智辯学園和歌山高等学校時代から応援団に所属し、野球や陸上などさまざまなスポーツの応援に励んできた。明治大学応援団では、渉内、ステージ企画、記録の3役を兼任する。

拍手1つにも全身全霊。1年生の頃には裂けていた手の皮は、今では硬く分厚い。

ー小林さんは現在、明治大学応援団に所属されていますが、大学に入学する前から応援に興味があったのでしょうか。

はい、高校時代から応援団で活動していました。私の出身校である智辯学園和歌山高校は、野球の強豪校で、中学の頃から学校を挙げて野球の応援をしていたんです。最初は正直「行かされてる」という感じだったんですけど、だんだん楽しくなってきて。応援団に所属したのは高校からですね。そこからさらに応援することが好きになりました。

ー応援団のどんなところに惹かれたのでしょうか?

応援には勝ち負けがないところが魅力だと思っています。スポーツには勝ち負けがあって、チームが弱くなるとそのチームを見なくなってしまうこともあると思うんですけど、応援団はチームがどんな状態の時も、そこにいる。試合に負けたとしても必死になって声を出している応援団を見ていたら感動して。そういうところに惹かれました。

ー応援団は、発声や体力づくりなど、本番に向けて厳しいトレーニングを重ねるイメージがあります。日々、どのようなトレーニングを行っているのでしょうか?

基礎体力を強化するために、ランニングは欠かせません。また、応援には「テク」という指揮を取るための振り付けがあります。例えば、頭の後ろから手を前に出して止め、また頭の後ろにしまい、さらに左右に出して…などの動きのことですが、その振り付けに合わせて拍手を揃えるのも大事なトレーニングです。応援団が揃わなければお客さまも揃えられないので、手を鳴らす練習をひたすら行うんです。1年生の頃などは、手の皮が裂けて悲惨な状態でした。続けていくうちにどんどん手の平が硬く、厚みを増していきましたね。

ーそんな厳しい練習がありながらも、これまで応援団を続けてこられた原動力や、力になったサポートがあれば教えてください。

正直、トレーニングが苦しくて、辞めようと思った時期もありました。その時に同期が声をかけてくれたり、話を聞いたりしてくれたおかげで、今も応援団を続けられています。苦しい時に助けてもらったからこそ途中で辞めるわけにはいかないし、私も誰かが悩んでいる時、その背中を押せる存在でありたいと思えるようになりました。

あとはやっぱり、実際に試合で応援をすると、やりがいを感じますね。応援と試合展開がうまくハマって会場が盛り上がると、見に来ていたお客さまから「あの時、気持ちよかった」みたいな感想をいただくこともあって。そういう瞬間は本当に嬉しいですね。

チャンスやピンチ、試合展開に応じた曲や言葉で観客席のテンションを最高潮に。

ー小林さんは、今年度の東京六大学応援団連盟委員長を務められています。どのような役割を担っているのでしょうか。

学生側の責任者として、各校の応援団を取りまとめたり、神宮球場との調整を進めたり、スローガンや応援ガイドラインを決めたりすることが主な役割です。また、1953年から続く六大学の合同演舞会「六旗の下に」の運営も、私たち応援団連盟の重要な仕事です。今年度は6月9日によこすか芸術劇場で開催し、非常に盛り上がりました。

ー東京六大学野球は、日本最古の大学野球リーグであり、世間からの注目度も高いと思います。東京六大学野球の応援ならではの特別な思いはありますか?

そうですね。六大学野球は、各大学の学生や卒業生だけではなく、幅広いファンの方がいらっしゃいます。中には何十年も通い続けてくださっている方も。また、試合はもちろん、応援団の活気ある姿を楽しみに来てくださるお客さまも多いリーグ。野球部だけでなく“応援団のファン”になってくださる方もいて、観客席から一緒に大きな声を出してくれると、もっと頑張ろうと励まされますね。

コロナ禍の2021年、2022年は、通常とは異なる外野席での応援でしたが、2023年に再び内野席で応援できるようになり、一度途切れた伝統が再び結ばれたように感じています。これからも東京六大学応援団連盟として、各大学が守ってきた伝統を尊重しながら、より良い応援を目指していきたいですね。

ーこれまで、野球をはじめ、さまざまなスポーツを応援されてきたと思います。小林さんが考える「良い応援」とはどういうものでしょうか。

応援団だけじゃなく、お客さまが自然と盛り上がるような応援が「良い応援」だと思っています。自分達が盛り上がるのは、応援団なので当たり前。なので、観客席の人たちが思わず声を出したくなるようなムードをいかにつくるかが腕の見せどころです。例えば、応援の前に私たちが何か面白い話をしたら、お客さまはプッと吹き出しますよね。そこで「そのノリで“明治”って言ってみましょう」と声をかけると、笑ったまま大きな声を出してくださることが多いです。

ー応援をするにあたり、試合展開に応じたプランをあらかじめ用意しているのでしょうか?それとも、展開を見ながら即興で対応するのでしょうか?

チャンス時の曲、ピンチ時の曲など、ある程度のプランは決まっています。それ以外のシーンでは、応援団長が即興で曲やコールを決め、ハンドサインで全体へ伝達していきます。選手の名前をコールするときに、「頑張れ」のところを「踏ん張れ」に変えるなど、試合展開に応じた言葉選びをすることもありますね。選手はもしかしたら試合に集中していて気付かないかもしれないですけど、そのちょっとした変更によって観客席のテンションが高まり、一体感が強まるんです。

ご本人提供

応援は勝敗に直結しない。だからこそ、格好いい。

ー応援団での活動を通じて、ご自身が成長したと思う部分はありますか?

応援団の活動では、先輩から「思いっきりやってこい」と言われることがよくあります。初めは大きな声で応援することが恥ずかしかったのですが、続けているうちに声を出せるようになり、今では思いっきりパフォーマンスすることが当たり前になりました。中学生の頃は人見知りでおとなしいタイプでしたが、応援団のおかげで明るく積極的な性格に変わったと思います。

ー今まで六大学野球をはじめ、さまざまなスポーツの応援を行ってこられたと思います。その中でも、特に「やりがいがあった」と感じた試合やシーンを教えてください。

たくさんありますが、一つ挙げるなら「明治神宮外苑⼤学クリテリウム」という自転車競技の大会です。自転車が応援団の前を通り過ぎるのは一瞬ですが、それでも選手が反応をくれて、笑顔を見せてくれたんです。その後、優勝をつかむシーンに立ち会えたこともあり、とても印象に残っている大会です。

ー応援団として「応援する」立場が多いと思いますが、人から「応援された」ことで印象に残っているエピソードはありますか?

何よりうれしいのは、家族からの応援ですね。私は大学から東京で一人暮らしをしていて、家族に会える機会はあまりありません。それでも、応援団でパフォーマンスする時は、父も母も見に来てくれるんです。母は手紙が好きで、差し入れの中に「頑張っている姿を見に来たよ」というような、ちょっとしたメッセージを入れてくれます。なかなか会えなくても温かく見守ってもらっている気がして、すごく力になります。

ー東京六大学応援団連盟、明治大学応援団ともに、12月31日で任期終了とうかがっています。あと数ヶ月どんなふうに活動していきたいか、意気込みをお聞かせください。

応援は試合の勝敗を左右するものではないかもしれません。それゆえに、「応援なんてどうでもいい」と考える人もいるでしょう。ですが、その「どうでもいいこと」に本気で取り組めるところが、応援団の格好良さだと思っています。そうした姿勢や心構えを後輩に引き継いでいけるよう、あと数ヶ月、精一杯活動していきたいですね。

今着ている学ランの裏地には、「愛を形に」という言葉を刺繍しているのですが、これには自分がこれだけ愛を持って取り組んできた応援というものを、形に残るように後輩に受け継ぐ、という思いを込めています。応援って本来は形がないものじゃないですか。でも後輩たちが応援への愛を受け継いでくれたら、この先もずっと残っていく。ある意味ではそれが「形」になるのかなって。

ー最後に、応援の経験が豊富な小林さんから、何かに挑戦している人、壁にぶつかっている人に向けて、応援のコメントをいただけますか。

何かに挑戦しようとすると、周りから勝手なことを言われたり、反感を食らったりして、苦しい思いをすることも少なくないと思います。でも、そこで立ち止まらず、もがき続けた人だけに見られる景色があるはず。自分の挑戦を諦めずに、立ち向かい続けてほしいと思います。

誰かの「かなえたい」を応援したい。

がんばる皆さんの想いに寄り添うサポート活動、
それがO-EN HOUSE PROJECTです。