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「児童養護施設の子どもたちのためのサッカーワールドカップ」が結ぶ、子どもの“挑戦”と社会の“応援”

「児童養護施設の子どもたちのためのサッカーワールドカップ」が結ぶ、子どもの“挑戦”と社会の“応援”

オープンハウスグループは児童養護施設や福祉型障害児入所施設、高齢者施設などを運営する社会福祉法人福田会の活動を継続的に支援しています。その福田会が結成したサッカーチーム「東京フレンズ」は、ポーランドのワルシャワで開催される「児童養護施設の子どもたちのためのサッカーワールドカップ」に2016年から出場を続けています。2025年6月の第10回大会を目前に控え、今回は「東京フレンズ」の歩みにスポットを当てました。日々の練習に打ち込む姿、夢に向かうまなざし、大会に懸ける熱い想い──。さまざまな困難を乗り越えながら進み続ける、彼らの“挑戦の軌跡”をお伝えします。

(2025年6月に取材)

  • 山田正人

    福田会職員
    東京フレンズの団長を務め、子どもたちの練習のサポートなども担当している。

    福田会職員
    東京フレンズの団長を務め、子どもたちの練習のサポートなども担当している。

  • 我妻みずき

    福田会職員
    東京フレンズの事務局として、大会への引率や現地での通訳、主催者との連絡調整を担当している。

    福田会職員
    東京フレンズの事務局として、大会への引率や現地での通訳、主催者との連絡調整を担当している。

約100年前の戦災孤児の受け入れが紡いだポーランドとの絆

当時の福田会園庭斜面での孤児集合写真(所蔵:日本赤十字社)

1876年に設立された社会福祉法人福田会は、児童養護施設の運営団体として日本で最も長い歴史を持ち、子どもたちの成長を支え続けてきました。140年以上の歴史の中で、福田会には特別なエピソードがあります。第一次世界大戦後の混乱期、シベリアに取り残されていたポーランド孤児375名を受け入れたのです。

このつながりをきっかけに、福田会は、ポーランドで開催されている「児童養護施設の子どもたちのためのサッカーワールドカップ」への招待を受けることとなりました。

ポーランドの「Hope for Mundial」協会が主催するこの大会は、ポーランド企業のスポンサー支援と政府の支援を受けて、2013年以降、コロナ禍の期間を除き毎年開催されています。過去9回の大会には、これまで世界45カ国から累計11,000人以上の児童養護施設の子どもたちが参加し、プロサッカー選手もプレーするワルシャワのレギアスタジアムで熱戦を繰り広げてきました。

日本代表として今回この大会に出場するのは、福田会と東京都内約60の児童養護施設から選ばれた中学生から高校生の子どもたち。彼らは「東京フレンズ」というサッカーチームを結成し、2016年から挑戦を続けています。福田会の職員であり、東京フレンズの団長も務める山田正人さんは、2025年6月に開催される第10回大会への意気込みを次のように語ります。

「昨年はコロナ禍を経て5年ぶりに出場しましたが、残念ながら予選敗退という悔しい結果に終わりました。東京フレンズは、過去5回の出場で、まだ一度も予選を勝ち抜いたことがありません。今年こそは決勝リーグ進出を果たせるよう、団長としてチームをサポートしていきたいと思っています」

東京フレンズの団長を務める山田正人さん

飛行機、海外、ジェスチャーでの会話。はじめてだらけの経験が、成長のきっかけになる。

大会への出場が決まった当初は、開催地がポーランドという遠い国だったこともあり、参加を希望する子どもが少なかったそうです。しかし、継続して出場し続けてきたことで、都内の児童養護施設で大会の知名度が年々上がり、「ポーランドでプレーしたい!」という思いを持って、熱心に練習に取り組む子どもたちが増えてきているといいます。

山田さんは今年のチームについて、「自分から積極的にコミュニケーションを取れる選手がそろっていて、個々のスキルも高いと感じています。海外での試合は、リラックスして臨むことが何より大切です。昨年も出場し、現地の雰囲気を知っている選手たちには、チームをうまくリードしてほしいですね」と期待を込めて話します。

昨年に続き、2回目の出場を果たす高校2年生のHさんは、「昨年のチームはサッカー未経験のメンバーが多く、思うようにゴールを決めることができずに、悔しい気持ちを抱えたまま帰国しました。今年は、応援してくださる皆さんの期待に応えるためにも、良い結果を残したいと思います」と力強く語ります。

同じく2回目の出場となる高校2年生のNさんは、昨年の悔しさをバネに、自主トレーニングに励んでいるそうです。「プレー技術が高くても、持久力がなければすぐに疲れてしまいますし、けがのリスクも高くなります。まずは持久力をつけることを目標に、週2、3日のランニングを欠かさず行っています」というお話から、大会に向ける熱意の強さが伝わってきました。

選手たちは、学校の部活動や施設のグラウンドなどで日々練習に励む他、2週に1回集まりフットサルコートで練習を行っています。限られた時間の中で、チーム一丸となって目標に向かって努力する姿は、まさにスポーツの素晴らしさを体現していると言えるでしょう。

ポーランド渡航前の最終練習を行う選手たち

福田会の職員であり、東京フレンズの事務局として、大会への引率や現地での通訳、主催者との連絡調整を担当する我妻みずきさんは、ワールドカップへの挑戦が子どもたちに与える影響について、次のように話します。

「海外に行くのも飛行機に乗るのも初めてという子が多く、現地で経験するすべてが新鮮で刺激的です。大会の会場では、さまざまな国の選手とジェスチャーで会話したり、握手を交わしたりする機会もあり、日本で暮らしているだけでは見えない新しい世界に触れることができます。こうした体験が、子どもたちにとって大きな成長のきっかけになると感じています」

主催者との連絡調整を担当する我妻みずきさん

実際に、ポーランドでの体験は、子どもたちの世界観を大きく広げるきっかけとなっているようです。Nさんは「僕たちが日本で“当たり前”だと思っていることが、実は世界ではそうではない。他の国にはそれぞれの常識があって、一つの価値観だけにとらわれなくていいんだということを学びました」と、異文化体験の価値を語ります。

また、大会への挑戦を通して、将来どのような自分になりたいか聞いたところ、Hさんからは次のような答えが返ってきました。

「昨年の大会に出場して、日本語が通じない環境を初めて経験したことで日本に来る外国人の気持ちが分かり、相手の立場に立って考えられるようになった気がします。そして、ポーランドでサッカーの大会に出られているのは、過去に福田会とポーランドの出会いがあったからこそなので、何気ない出会いを大切にしていきたいと感じるようになりました。将来の目標はまだ決まっていませんが、どんなに小さな出会いでも、それを大切にしていけば、いずれ自分が困った時に誰かに助けてもらえるし、誰かを助ける存在にもなれるのではないかと思います」

クラウドファンディングで実感した、社会からの「応援」

東京フレンズの挑戦は、多くの人々の支援によって支えられています。福田会では2017年からクラウドファンディングを実施し、集まった支援をもとに、子どもたちをポーランドへと送り出しています。我妻さんは、クラウドファンディングの目的について、次のように説明します。

「クラウドファンディングの主な目的は、大会の存在を広く知っていただくことと、日本の児童養護施設の子どもたちがその大会に参加していることを伝えることです。多くの応援が集まることは、子どもたちの大きな励みになると考えています」

今年は新たな取り組みとして、初めて企業スポンサーを募り、スポンサーロゴの入ったTシャツを制作したそうです。山田さんはその意図について、このように明かします。

「これまで、児童養護施設としてさまざまな形でご支援をいただいてきましたが、子どもたちにとっては、その支援の形がなかなか見えにくい部分がありました。今回、スポンサーロゴが入ったTシャツを着ることで、たくさんの応援を背負って戦っていることを、子どもたちに実感してほしいと考えています。オープンハウスグループには、2019年に福田会の施設園庭に複合型遊具を寄贈していただきましたが、Tシャツに刻まれたロゴを見て、改めて『あの会社も応援してくれているんだ』と感じた子も多かったのではないでしょうか」

東京フレンズの挑戦は、単なるスポーツ大会への参加にとどまらず、すべての子どもたちが持つ可能性を信じ、社会全体でその成長を支援することの大切さを教えてくれます。過去のメンバーの中には、ポーランドでの経験を通じて英語学習への意欲を高めたり、留学を志すようになったりした子どもたちもいたそうです。これらの変化は、一つの体験がどれほど人生を変える力を持っているかを物語っています。

東京フレンズの挑戦を通して、福田会が最も伝えたいメッセージとは何でしょうか。山田さんは、最後に「挑戦すること」の価値について、力強いメッセージを寄せてくれました。

「児童養護施設の子どもたちは、決して特別な存在ではありません。彼らは他の子どもたちと同じように、一人の人間として多くのことに挑戦し、日々を生きています。そんな彼らがワールドカップの舞台で戦う姿を見て、少しでも何か感じて、応援してくださる方が増えたらいいと思っています」

第10回という節目の大会に向けて、東京フレンズの子どもたちは今日も練習に励んでいます。彼らの挑戦を支える人々の思いと共に、子どもたちの笑顔と真剣な眼差しが、明るい未来への希望を照らし続けています。オープンハウスグループは、これからも人々の夢に寄り添い、挑戦する「勇気」を応援していきます。

取材後、「児童養護施設の子どもたちのためのサッカーワールドカップ」での様子。結果はベスト16位の大健闘だった(福田会提供)
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