オープンハウスグループは、「挑戦する人や組織を応援する」という企業姿勢を体現する社会共創活動「O-EN HOUSE PROJECT」の一環として、若手アーティストの創作活動を応援する「[仮]展 – KARIKAKOI ART EXHIBITION-」 を一般社団法人サステナブル芸術創造機構との共催で実施しました。
本プロジェクトでは、オープンハウスグループの新マンションブランド「INNOVAS(イノバス)」第1号物件「イノバス不動前」の建設現場の仮囲いを活用。通常は工事現場を覆い隠すために使われる仮囲いを、若手アーティストの作品を披露する「ストリートミュージアム」へと再定義し、街にひらかれた新しいアートの場を創出しました。
街づくりを担う企業として、日々“新しい暮らし”を形づくる現場が、今度は“新しい表現”を生み出す舞台になる。アートと建設現場という異なる領域が交わることで、街行く人々に偶然の出会いと刺激を届ける試みです。
公募の結果、展示作品に選ばれたのは、アーティスト・Tokoma Tomatoさんの《斑入り唐なすび》。仮囲いに描かれた作品には、どのような想いが込められているのか。その制作の裏側を伺いました。
(2025年10月に取材)
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Tokoma Tomato
広島県広島市出身。2024年広島市立大学芸術学研究科 造形芸術専攻彫刻研究修了。2017年よりTokoma Tomatoとしてアーティスト活動を開始。横川まちの芸術祭(2023年)、くどやま芸術祭(2025年)などで作品を発表。トマトや恐竜などをモチーフに、平面作品のみならず、立体やデジタルアートなどさまざまな素材や手法を用いた創作を行う。
Instagram: https://www.instagram.com/tom_and_ato/
広島県広島市出身。2024年広島市立大学芸術学研究科 造形芸術専攻彫刻研究修了。2017年よりTokoma Tomatoとしてアーティスト活動を開始。横川まちの芸術祭(2023年)、くどやま芸術祭(2025年)などで作品を発表。トマトや恐竜などをモチーフに、平面作品のみならず、立体やデジタルアートなどさまざまな素材や手法を用いた創作を行う。
Instagram: https://www.instagram.com/tom_and_ato/
駅徒歩3分、多様な人が行き交う空間に現れた“かわいいトマト”
― Tokoma Tomatoさんの作品《斑入り唐なすび》が、建設中のマンション「イノバス不動前」の仮囲いに展示されました。受賞の知らせを受けたとき、どんなお気持ちでしたか?
今年の夏、「[仮]展 – KARIKAKOI ART EXHIBITION-」のコンペに応募したのですが、受賞のメールをいただいたときは信じられなくて、何度もメールを読み直しました。作品を実際に現地で展示するにあたり、事務局のみなさんと連絡を取り合ううちに、少しずつ実感が湧いてきたという感じです。
現在、広島県に在住しているのですが、作品の施工日には東京都の「イノバス不動前」まで行って、公共空間に現れる瞬間に立ち会いました。自分の作品がここまで大きく掲出されるのは初めての経験です。「イノバス不動前」があるかむろ坂は人通りの多い場所で、作品が掲出されてすぐに前を通った小さな子どもが「かわいい」と言ってくれたときは、とてもうれしかったですね。


―受賞作品はトマトをモチーフとしたものですが、Tokoma Tomatoさんのお名前もトマトなんですね。
2017年頃からこの名前でアーティスト活動を行っていて、トマトをテーマにした作品を数多く発表しています。トマトを最初に作品にしたのは高校の美術の授業でした。自由なテーマで絵を描くという日があって、好きな食べものを描こうと思ってなんとなくトマトを調べたんです。そのとき「トマトってなんかかわいいな」って思いまして(笑)。そこからトマトとは現在まで長い付き合いです。
―トマトがかわいいキャラクターになっていますよね。
このキャラクターはトマトを描き始めて1年くらいした頃に生まれました。当時通っていた画塾で、広島市現代美術館に行って作品を鑑賞する機会があったんですが、現代美術って、それまできちんと鑑賞したことがなく、生まれて初めて真剣に鑑賞しました。これが非常に面白かった! その直後、絵を描きたくなる衝動が自分の中に湧いてきて、そのときに生まれたのがこのトマトのキャラクターです。
トマトって、16世紀頃、原産国のペルーからヨーロッパに入ってきて、当初は観賞用の植物だったんです。そしてトマトが食用として使われ始めたのは、なんと200年後の18世紀頃になってから。私たちが食用としてしか見ていないトマトが、実は見るためだけの存在だった、その事実がとても面白いと思っています。
トマトにまつわるイノベーションの歴史を、イノベーティブなアート手法で表現する
― 今回「[仮]展」で入賞された作品について、制作に込められた想いやお考えをお聞かせください。
今回の公募は、イノベーティブな要素がある作品がテーマというところに魅力を感じ、応募したんです。広島県にいたので、Googleストリートビューで「イノバス不動前」の周囲の雰囲気や、人の行き交いなどをチェックして、現地の空気感を表現しようと試みました。
作品は、江戸時代の絵師、狩野探幽(かのうたんゆう)が描いたトマトをオマージュしたものです。江戸時代の日本でもトマトは観賞用として栽培されていて、当時は「唐なすび」と呼ばれていました。トマトのラインは、手すき紙に筆ペンで描き、それをスキャンしてデジタル作品に組み込みました。手すき紙の風合いや、筆ペンに込められた線の力みたいなものを出したいなと。
そして、鑑賞物だったトマトが食べ物として扱われるようになり、再び鑑賞物へ戻る、というトマトのイノベーションの歴史を作品のテーマにしています。トマトや背景のまだら模様は、私が考案し「mottled painting」 と名づけたデジタル手法で描き出したものです。

―Tokoma Tomatoさんは大学では彫刻を専攻されています。大きく異なる平面の世界にチャレンジされるのはなぜでしょうか?
自分としては、「彫刻だけ」「平面だけ」と絞らず、そのときにやりたいことに即した手法をピックアップして作品を作っていきたいと思っています。そう考えるようになったのは、通っていた大学も先生も、自由で柔軟な風潮があったから。例えば、映像作品でも「これは彫刻だ」と言えば彫刻と認めてくれるような環境だったんです。そんな雰囲気だったからこそ、今のようにさまざまな表現に挑戦できているのだと思います。今後もいろいろな手法で作品を発表していくつもりです。
―また、さまざまな公募展や芸術祭にも参加していますね。
展示場所やテーマ、コンセプト、サイズ感や制作期間などを調べて、自分の志向するものと合致したときに参加するようにしています。今回の「[仮]展」では、公共空間の展示ということを意識できた点で、成長できたと感じています。「公の場所に適した作品であるか」といった点は、これまであまり考えなかったこと。公募や芸術祭に参加することで、新しい視点を持てるのもうれしいです。

―アーティストとして活動していくうえで、現在の社会についてどのように感じていますか?
「表立って目立っている個性」のみ尊重されている現代の社会に、少し違和感を覚えています。「本来の多様性とは異なっているのではないかな?」と。特に目立つことをしなくても、主張があってもなくても、その人の個性なんだということを認識してもらいたいなと思います。そもそも人の個性って、属性やシチュエーション、年齢などさまざまな条件で変わってくるもの。実は《斑入り唐なすび》のトマトは赤一色ではなく、いろいろな色が混ざり合っているのですが、そこに個性や多様性を象徴させています。
あと、アートの世界って思っている以上に万人に開かれていないと感じています。目の不自由な方は美術作品を見ることができませんし、音の作品は聴覚に障がいのある方は鑑賞できない。段差があって、車椅子の方が入れない部屋のあるギャラリーもあります。誰もが平等に鑑賞できる作品って、本当に少ないと思うんです。でも、「それが当たり前」と諦めるのではなくて、例えば、解説のパネルを点字入りで作るとか、段差を解消するスロープを作るとか、誰もがアートに近づける環境を作る努力をする必要があると考えています。
その場所を通る人全員の目に入る仮囲いだからこそ、アートに触れて来なかった人にもアクセスできる
― 今後、ご自身の作品がマンションギャラリーやオープンハウスのオフィスなど、建設現場以外にも展示される予定です。
自分の作品が、知らないどなたかの目に触れる機会が増えるのはとても光栄です。近年のオフィスは、自由でおしゃれな空間が増えてきていますよね。そんな場所で自分の作品が働く方の気分を前向きにしたり、ふとしたアイデアが生まれたりするきっかけになったらうれしいです。自分もさまざまなものからインスピレーションを受けて、それが創作につながっていくことがよくあるので、誰かの何かを動かす起点になれたらと思います。

―今回のアートプロジェクトをどう感じましたか?
作品を展示するだけであれば、若手アーティストでもギャラリーを借りればよいだけなので、それほど難しくはありません。けれど、本当の意味で「作品を人の目に触れさせる」機会を作るのが大変なんです。その点、今回のプロジェクトでは、仮囲いを街にひらかれた展示の場とすることで、普段アートに触れる機会の少ない街行く人々の目に作品が届きますよね。こうした場所を活用したプレイスメントによって、若手のアーティストにチャンスを与えられる点が、このプロジェクトの大きな価値だと思います。
―これから、何かにチャレンジしてみようと考えている方にメッセージをお願いします。
とりあえず動いてみる、手を動かしてみる。ビビッとくる公募があったなら作ってみる、既存の作品を送ってみる——。そんなふうに、まずは何かを始めることが大切だと思います。「一歩を踏み出そう」とよく言いますが、その“一歩”のハードルは想像以上に高いもの。そんなときは、1ミリだけでも動いてみる。それができたら、もう1ミリ、もう2ミリ……。どんなに小さくても、前進を繰り返していけば、気がついたときには一歩分踏み出せています!

誰かの「かなえたい」を応援したい。
がんばる皆さんの想いに寄り添うサポート活動、
それがO-EN HOUSE PROJECTです。
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