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メタバースやゲームを、“遊び”ではなく“営み”にする|メタバースエバンジェリスト角田拓志

メタバースやゲームを、“遊び”ではなく“営み”にする|メタバースエバンジェリスト角田拓志

未知の技術やビジネスモデルに出会った時、「胡散臭いから関わりたくない」と遠ざける人と、その可能性とフラットに向き合う人がいます。挑戦する人を応援するオープンハウスグループは、後者の考えから、さまざまな分野のチャレンジャーたちに、資金や人材を提供しています。今回インタビューにお応えいただいた角田拓志さんもそのひとり。

角田さんが取り組むテーマは、インターネット上に構築された3D仮想空間「メタバース」。ゲームやエンターテインメントの世界では身近なものになりつつありますが、近年はビジネスや地方創生など、より幅広い領域で活用が進められています。オープンハウスグループが角田さんとともに立ち上げた戦略子会社・株式会社モンドリアンも、世界中のクリエイターとともに、メタバースカルチャー、エコノミーを広げるべく活動しています。

  • 角田拓志

    株式会社モンドリアン 代表取締役社長/メタバースエバンジェリスト。1988年大分県生まれ。ゲーム企業にてマーケティング戦略を担当した後、2023年オープンハウスグループの出資を受け、モンドリアンを設立。現在は複数の企業・団体におけるメタバースのビジネス導入を支援するほか、執筆・講演活動などでも活躍中。

    株式会社モンドリアン 代表取締役社長/メタバースエバンジェリスト。1988年大分県生まれ。ゲーム企業にてマーケティング戦略を担当した後、2023年オープンハウスグループの出資を受け、モンドリアンを設立。現在は複数の企業・団体におけるメタバースのビジネス導入を支援するほか、執筆・講演活動などでも活躍中。

「バーチャル空間で“生活”している人がもうすでにいる」。その衝撃からメタバース業界へ飛び込んだ。

ーまずは角田さんのメタバースとの出会いについて教えてください。

以前はゲーム業界にいて、マーケティング戦略を担当していましたが、当時あるスマホゲームがめちゃめちゃ流行りだして。3D空間でバトルをするゲームなんですが、その空間ではプレイヤー同士で会話ができるので、一緒に撃ち合いをするうちに仲良くなったり、恋人を作ってしまう人まで現れたりして。これはもうただのゲームではなくて、コミュニティーだなと。それも、ゲーム好きの人だけじゃなくて、普段あまりゲームをやらない人とか、女子高生が日常的にゲームの中でコミュニケーションを取り、人間関係を構築していることに衝撃を受けました。

そこから興味を持って調べる中で、バーチャル空間で世界中の人たちと交流するプラットフォーム「VRChat」に出会います。これがまた衝撃的でした。大げさじゃなく、ユーザーは、ほとんどバーチャル空間で“生活”しているんですよ。夜はヘッドマウントディスプレイを装着したまま寝て、朝起きたらまず、バーチャル空間で他のユーザーと一緒にラジオ体操してから、「じゃあね」と学校や会社へ行く。帰宅したらまたヘッドマウントディスプレイを着けてみんなと夜まで話したり、ゲームをしたり……これはもう、一種の生活圏と言えますよね。そこで社会性が育まれ、経済や文化が広がっているわけですから。こういう世界を知っていくうちに、メタバースに今までにない、新しい価値が生まれる可能性を強く感じ、飛び込んでみることにしました。

ー角田さんは、2023年にオープンハウスグループの出資のもと、同社の戦略子会社としてモンドリアンを設立されました。ご経歴のなかに、不動産業界との接点はあまりなさそうですが、どんなきっかけで出会ったのでしょうか?

オープンハウスに元々ブロックチェーン業界で働いていた方がいらっしゃったんです。メタバースとブロックチェーンは相互に補完し合うような関係なので、いろいろと接点がありまして。界隈のイベントでその方と知り合いになったのがきっかけです。

正直なところ、ブロックチェーンという世界のビジネストレンドの最先端のような世界から、不動産という大昔からある業界に移るなんて変わった人だなあという第一印象だったのですが、お話しさせていただくうちに、オープンハウスという会社は「不動産業界」と一括りにできない会社だなと思い直しました。常に新しいことにチャレンジし続ける、そういうスピリットを感じたんです。

―そこから、会社設立に至るまでにはどのようなプロセスがあったのでしょうか?

まず、アドバイザーという立場で関わってくれとオファーをいただき、メタバースを含む先進領域についての情報提供だったり、企画立案だったりに関わるようになりました。ただ、次第に「空中戦だけやっててもしょうがないな」という気持ちが強くなってしまって。メタバースに限らず、新しいテクノロジーについては、10年後、20年後どうなっていくのかとかさまざまな議論が交わされていますが、議論だけでは何も生まれないんですよね。それよりも、実践したい、今すぐ作って価値を出したい、という気持ちが高まっていったんです。

そこで「話すだけじゃなく、実際に事業としてやりましょう」と提案したところ、ご賛同いただけたばかりか、ご出資のもとで会社を設立することが決まったんです。オープンハウス社内には「評論家より行動者たれ」という言葉があるそうで、実践しようという姿勢に共感いただけたのだと思っています。事業を始めましょうという提案のつもりが、会社をつくり代表まで任されるとは思っていませんでしたが(笑)。

―アドバイザーからいきなり責任が重くなったように思いますが、そこまでコミットすることに抵抗感はなかったですか? 

驚きはしましたが、抵抗はなかったです。オープンハウス側が私に共感してくださったように、私自身もオープンハウスの企業姿勢や社員のマインドに共感していたので。成長し続けていくためには新しいチャレンジが必要と考えていて、そのための行動も惜しまない。ブロックチェーンやメタバースだって、私と出会う以前から積極的に取り組んでいたんです。そんなオープンハウスなら、これからも時代の波に乗って成長し続けるだろうと信じられたので、「ぜひ一緒にやりたい」と思いましたね。

JAXAや地方自治体とも。続々増える、メタバース活用の実践例

ーモンドリアンは、どのような会社でしょうか?代表的なプロジェクトなどを教えてください。

ゲーム・メタバースを、マーケティングや新事業開発、教育、地方創生などさまざまな領域で活用しています。例えば、JAXA(宇宙航空研究開発機構)宇宙教育センターが企画した「LUNARCRAFT」というコンテンツの制作協力をしました。これは、メタバースゲーム「Minecraft」上に作られた月面ワールドで、ゲームをしながら月や宇宙のことを楽しく学ぶことができます。
また、ゲームの中で企業や自治体とコラボして、地域の魅力発信や企業のPRにつなげる取り組みも始めています。その一例が、「ハッピーケーキ工場タイクーン」という経営シミュレーション型ゲーム。プレイヤーは、バーチャル空間「Roblox」内でケーキ工場を経営するのですが、その中で、企業の商品を製造する過程を工場体験として見せたり、地元の特産物を使ったケーキを販売したりすることで、ユーザーにPRできます。

ー企業や自治体が異業種からメタバースに参入するには、さまざまなハードルがあると思いますが、それを一緒に乗り越え、プロジェクトを実現していくための原動力はどんなところにありますか?

そうですね。彼らにとってメタバースに取り組むのは、大きな挑戦だと思います。原動力として一番大きいのは、クライアント側が「一緒にチャレンジしよう」というマインドを持ってくださることだと思います。モンドリアンは、ただ3Dモデルを作るだけの会社ではなくて、「お客さまと一緒に成功をデザインする会社」だと考えています。だから本気で取り組みますし、言われたとおりに制作して終わりではなく、「作った後どうするんですか?」とか、先のことも考えて意見を言っていきます。

その代わり、お客さまからも遠慮なく思いをぶつけていただきたいですし、お互いにやりたいことがあって、意見を交換し合いながら進める方が、結果的にうまくいきます。和歌山県の観光DX事業「METAVERSE WAKAYAMA」では、地元企業や自治体に協力いただく必要があったのですが、得体のしれないプロジェクトに最初から飛び込んでくれる方は多くありませんでした。そこで、まずは連携先の会社の社長様と話し合いを重ねて信頼を築くことを心がけました。地元の方を味方にすることで、周囲の方の理解も得ていくことができました。

ー逆にうまくいかないのは、どんな時ですか?

やはり「上から言われたから、仕方なくメタバースやります」みたいな雰囲気だと、難しいなと思いますね。関わる人たちみんなが「絶対成功させましょう!」と、同じ熱量で向かい合うことができれば、プロジェクトは確実に成熟していきますし、周囲の人にも波及していくはず。そうなれば、「地元のメディアに紹介して宣伝してもらいます」とか、「このコンテンツ、学校で使ってもらえるように声をかけてみます」とか、率先して動いてくれるようになるので、成功率も上がりますよね。

ー新しいチャレンジには、失敗や困難もつきものですが、怖さを感じることはないのでしょうか?

僕自身は、あまりそこに怖いという感覚はないですね。むしろ、「チャレンジしない」ことの方が怖いかもしれません。無難な企画や、以前どこかでやったものの焼き直しのような企画をやる方が、嫌なことだと感じます。何かしらチャレンジしていれば、たとえその時は失敗しても、いつか成功につながるかもしれませんが、全くチャレンジしてないことに時間を費やすのは、避けたいと思っています。

子どもが「帰ったら、ゲームしなさい」と言われる世界を目指して。

ーモンドリアンは「メタバースクリエイティブアワード」を開催して優れたメタバースクリエイターを表彰するなど、クリエイターの発掘や支援にも取り組んでいますが、どのような思いからでしょうか?

今この業界が盛り上がっている源泉は、クリエイターにあると思っているからです。例えば動画コンテンツも、昔は「見るだけ」の人が多かったと思いますが、YouTubeのようなプラットフォームが普及したことで、誰でも動画を作って、世の中に出すことができるようになり、発展していきました。メタバースも同じで、技術的なハードルが下がって、誰でも参入しやすくなってきたことでパラダイムシフトが起きています。2月に開催された「メタバースクリエイティブアワード2024冬」でも、ゲームのプロだけでなく、会社勤めの方や学生さんたちが受賞しています。年齢や職業などにかかわらず、さまざまな人に可能性が開かれていると感じます。

今はクリエイターが作ったものがどんどんアップされて、みんなで遊んでいく中で新しい発想が生まれ、技術が磨かれている。クリエイターの創作が活発になればなるほど、この世界に価値が生まれていくと信じているので、しっかり応援していきたいですね。

ーさまざまなクリエイターと出会う中で、触発されることもありますか?

はい、若い才能はすごいですよ!小中学生でも天才的なゲームを作る人がいます。作品だけ見ても年齢はわからないので、「うちに入りませんか?」と声をかけたら「いや中学生なんですけど」っていうことも(笑)。僕自身も年齢を重ねるとどうしても過去の成功体験をなぞってしまいそうになったり、考え方が固まってしまったりすることもありますが、若いクリエイターと話していると、新しい発想や刺激をもらえます。

ー成長を続けるメタバース業界で、今後叶えたい夢や目標はありますか?

今の課題としては、メタバースやゲームに対する偏見・先入観を払拭すること。モンドリアンでは、ゲームをビジネスや教育に活用するコンテンツをたくさん作っていますが、世の中ではまだまだ「ゲームって遊びでしょ」と軽く見られている面があるのも事実です。例えば、マーケティングにおいてSNSの1投稿と、ゲームの1プレイでは、どちらが有効なのか。SNSの方が不特定多数の人に見られるかもしれませんが、3D空間の中は情報量が多く、体験の質も高いので、より深い理解や共感を生みやすいのではないでしょうか。

こうしたゲームの価値を伝えたいと、講演や執筆活動にも尽力しています。今、子どもたちは親から「ゲームばっかりしてないで勉強しなさい」と言われるかもしれませんが、もっとゲームの価値が広まって、逆に「帰ったら絶対ゲームやりなさいよ」と言われるのが当たり前の世界をつくることが夢です。そうすれば、仕事も勉強ももっと楽しめる人が増えて、社会全体が豊かになっていくと思います。

誰かの「かなえたい」を応援したい。

がんばる皆さんの想いに寄り添うサポート活動、
それがO-EN HOUSE PROJECTです。