日本の未来のため、さまざまなステークホルダーと共に地域共創を展開しているオープンハウスグループ。2023年7月には、北海道の十勝地域で地域共創に取り組む株式会社そらと共同で新会社「株式会社かぜ」を設立し、新たな地域共創プロジェクトを始動させました。
オープンハウスグループがタッグを組む、そら社とはどんな会社なのか。両社の共創によって何が生まれるのか。そして、かぜ社の挑戦とは。そら社・かぜ社の代表を務める米田健史さんに話を聞きました。
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米田 健史
株式会社かぜ 代表取締役
“1986年3月5日東京都生まれ。北海道大学法学部卒。2020年4月に帯広市で株式会社そらを設立。2年ほどの間にグランピングリゾートの運営会社やホテルを子会社化し、起業家支援も手掛ける。2023年、「オープンハウスグループ」と合同で新会社「株式会社かぜ」を設立。
“1986年3月5日東京都生まれ。北海道大学法学部卒。2020年4月に帯広市で株式会社そらを設立。2年ほどの間にグランピングリゾートの運営会社やホテルを子会社化し、起業家支援も手掛ける。2023年、「オープンハウスグループ」と合同で新会社「株式会社かぜ」を設立。
「大好きな十勝でずっと暮らしたい」。東京生まれ東京育ちの金融マンが十勝で起業。
―まずは米田さんがそら社を起業した北海道・十勝との出会いをお聞かせください。
私は生まれも育ちも東京なんですが、大学は東京の外に出たくて、進学先選びのために浪人して日本各地を巡りました。北海道にたどり着いたのが19歳の秋で、その時に「なんていいところなんだろう!」と感動し、北海道大学に進学しました。そして大学時代には北海道中を巡り、特に引かれたのが十勝だったんです。
十勝は空が圧倒的に広いんですよ。北海道と聞いてイメージする、どこまでも広がる高い空と大地が、まさに十勝のそれなんです。「十勝晴れ」といって晴天率も高く、晴れ渡った大空の下にいると力が湧いてきて、「生きてるなー」って実感できる。そんな十勝が大好きになりました。
―そこから起業に至るまでにはどんなプロセスがあったのでしょうか。
大学卒業後、国内大手証券会社に就職して東京に戻りました。法人向けの営業に足かけ6年携わり、入社5年目から4年間は従業員組合の専従となり、後半の2年間は執行委員長を務めました。その後、大好きな十勝に貢献したいと、十勝エリアの営業所に異動願いを出して帯広に移住。1年半後に退職し、金融業界で働いていた友人2人と共に帯広市で株式会社そらを立ち上げたのが、2020年4月のことです。
―順調にキャリアを積んでいた中、退職して起業を選んだのはなぜだったのでしょうか。
大好きな十勝でずっと暮らしていきたいというのが一番の理由でした。それは転勤がある証券会社に勤めていたらかなわないことです。そして起業すれば、十勝の恩恵を受けるだけでなく、事業を通して自分が「いい」と思う十勝をつくることができます。大好きな十勝で、十勝をもっと豊かな場所にしていきたい。そう思っての起業でした。
―そら社で行っている事業を教えてください。
「十勝に人とお金を呼び込む」を掲げ、観光・宿泊や飲食業などさまざまな事業を展開しています。目指すのは、十勝に事業をつくり、雇用を生み、移住者と観光客を呼び込んで、十勝の地域内総生産を拡大すること。主な事業にグランピングリゾート「フェーリエンドルフ」、天然温泉付きビジネスホテル「ふく井ホテル」があり、2023年1月末に閉店した道東最後の百貨店「藤丸」の再建スポンサーも担っています。
当初は創業メンバーの強みを生かして、十勝で金融教育を展開しようと構想していました。ところが起業と同時にコロナ禍が始まり、観光業と飲食業が大きな打撃を受けていたため、方向転換したのです。そんな折にフェーリエンドルフのオーナーとご縁がつながり、M&Aで事業を承継することになりました。
―コロナ禍という状況下で、証券会社からグランピングリゾート経営に転身することに、不安はなかったのでしょうか。
不安はありませんでした。未知の分野だろうとリスクがあろうと、全力で当たってチャレンジしたいと思いました。さらに言えば、金融の世界では「有事はチャンス」と考えるので、急激に落ちこんだ業種にこそチャンスを見出せないかと考えましたね。
自分たちでテントの掃除をしたり、薪を運んだり、そんなところからのスタートでしたが、フェーリエンドルフはコロナ禍でも売上を大幅に伸ばし、その後もレストランやスパなど新しい施設を増やして成長を続け、十勝の雇用創出や、移住者・観光客の増加に貢献しています。
地域共創と収益を両立するモデルの確立を目指して。
―2023年には、そら社とオープンハウスグループが共同出資して株式会社かぜを立ち上げました。オープンハウスグループとはどんなきっかけで出会ったのでしょうか。
そら社を立ち上げて2年目に、オープンハウスグループの方が帯広まで会いにきてくださったのがきっかけです。その後、荒井正昭社長からお声がけいただき、東京で初めてお会いしました。そこから荒井社長との交流が始まり、お互いの事業について話す中で「一緒に何かできないか」とご提案をいただいたんです。荒井社長もご出身地である群馬を中心に地域共創に注力されているので、私たちが懸命に十勝の創生に取り組む姿勢に共感してくださったのかもしれません。ただ、私にはそら社があり、十勝が拠点なので難しいだろうと考えていました。
―考えが変わるきっかけは何だったのでしょうか。
最初のきっかけは、そら社が新しいスパを建設するために実施したふるさと納税型クラウドファンディングで、荒井社長から2,000万円もの寄付をいただいたことです。期限が迫ってもなかなか目標に届かないという局面で、荒井社長の寄付によって一気に寄付額が伸び、目標の1億円を達成できました。翌年にはさらに5,000万円の寄付をいただき、総額7,000万円という多大なご支援を賜りました。そのご支援が本当にありがたく、心強かったですね。
そして決め手となったのは、オープンハウスグループが地域共創の一貫として取り組む「OPEN HOUSE ARENA OTA」です。建設現場を見学させていただいたのですが、「こんな大規模な地域共創があるのか」と、強烈な印象を受けたのを今も覚えています。
当時、そら社はスパ建設と並行して、倒産寸前の地元の百貨店「藤丸」から支援の打診を受けていました。巨額の費用と時間がかかる百貨店再建をどうするか悩んでいた時に、オープンハウスグループの圧倒的なスケールを目の当たりにし、「規模の力」を実感したんです。地道な取り組みだけでは、突破できないことがある。でも、これだけの規模を持つオープンハウスグループとなら、とてつもなく大きなことを高速で実現できるのではないか−−。そう確信し、協業を改めて申し入れました。
―その後、そら社とオープンハウスグループが共同で設立したかぜ社とはどんな会社なのか教えてください。
両社の地域共創のノウハウと、オープンハウスグループの不動産のノウハウを活かして地域共創の新しい事業モデルを確立し、全国に広めることを目指して立ち上げた会社です。具体的には、「ウェルスマネジメント事業」と「地域共創事業」の2つを展開しています。
オープンハウスグループのウェルスマネジメント事業では、アメリカ不動産を日本のお客様に販売しています。かぜ社では、例えば十勝での事業であれば、十勝のお客様にアメリカ不動産を販売し、その収益を十勝の地域共創事業に還元します。不動産が売れるほど地域共創事業に投下する資金が増え、地域のお金を運用に回すことで地域経済の拡大も図る仕組みです。この事業モデルをまずは十勝で確立すべく、現在はオープンハウスグループのウェルスマネジメントチームと連携しながら、十勝のお客様へのご提案を進めています。
―地域共創の新しいモデルを考えた背景には、何があるのでしょうか?
かぜ社が手がける地域共創事業は、地域に入り込み、自ら「人・金・時間」を投下して地域をつくる取り組みです。同様の事業を手がける企業は多いものの、問題は収益化が難しいことです。経済低迷や人口減少など多くの課題を抱える地域で、大きく落ち込んだところからプラスに転じさせるのは容易ではなく、時間もかかります。これをやりきる体力のある企業は少なく、結果的に小さな取り組みに留まり、インパクトを出せません。そんな現状に、そら社としてももどかしさを感じていました。
より大きなスケールで地域共創を推し進める方法を模索した結果、たどり着いたのが、地域共創と同時に収益も成り立つモデル。それも小規模ではなく、一定の規模以上の資金を地域に投下できるモデルです。地域共創事業と収益事業を両輪で走らせ、両方を大きくする。オープンハウスグループと組むからこその挑戦です。
2社のタッグで、世の中に大きなインパクトをもたらしていく。
―そら社の起業から約4年、米田さんは地域創生に一心に取り組まれていますが、成し遂げたいこととは何でしょうか。
荒井社長にもよく聞かれますが、実を言うと私には明確な目標がまだないんです。そこが今の自分に足りないところかもしれません。「世界一の〇〇を目指そう!」などと旗を振れたら、共感者も増えるし、自分にも芯が一本通ってもっと強くなれますから。いつか見つかるといいなと思っています。
ただ、明確な目標はないですが、「大きい絵」を描きたいとは思っています。今よりもっと大きい絵を描けるように、それを誰よりも早く実現するために、全力で頑張りたい。課題はたくさんあるけれど、全ては自分を成長・進化させ、いつか大きな絵を描けるようになるための修行。そう心に刻んで邁進しています。
―では、かぜ社として現在どんな絵を描いているのか、今後の展望をお聞かせください。
地域は負の影響を受けやすく、ちょっとしたことで停滞し、人もお金もノウハウも足りない状況で行き詰まってしまいがちです。そこに、新しい風を吹きこめたらと思います。十勝や群馬をはじめ多くの地域に新しい明るい風を届けて、日本に漂う閉塞感をはらい、世の中にポジティブな変化をもたらしていきたいです。
―それを実現していく上で、オープンハウスグループとのタッグにどんな期待を抱いていますか?
かぜ社設立にともない、オープンハウスグループから十勝の地域共創事業に10億円規模の資金提供の表明をいただきました。資金提供は寄付などを通じて、遠くない将来に実行されます。これだけの規模感と機動力を兼ね備える企業は他にそうはなく、強力なパートナーを得たと思っています。
世の中には、素晴らしい取り組みなのに、人に知られずに終わってしまうものがたくさんあります。そうではなく、かぜ社では世の中に大きなインパクトをもたらすことをやりたい。オープンハウスグループと組むということは、そのチャンスを得たということです。両社が持つものを活かし合い、どこまで大きな絵を描き実現できるのか、考えるだけでワクワクします。
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